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週刊 野ブタ。

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2005年 10月 22日

原作版ロングレビュー

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■原作版ロングレビュー

●「キャラクター」を「プロデュース」する

 「キャラクター」という言葉が、物語の登場人物の設定や性格付けのことを指す意味で使用されるようになったのは、いつ頃からだろうか? さらに、実際の生活で、本人が前面に押し出してくる自己イメージのことを指すようになったのはつい最近のことのような気がする。
 これは、別に最近になって自分たちの属している人間関係を、「物語」としてメタ視する文化が浸透したということだろうか? たぶんそれは違う。今も昔も少し鼻の効く人間なら、誰だってこれくらいのことは自覚していたはずだ。おそらくは「キャラクター」という「和製英語」が浸透するにつれ、実際の人間関係を説明するのに便利な言葉として比喩的に用いられるようになったのだと思う。

『野ブタ。をプロデュース』は、そんな「人間関係のメタ視」が前提となった青春小説だ。語り手の桐谷修二は、周囲の人間をバカにしきっている嫌な奴だ。その割に他人の目ばかりを気にしている彼は「さわやか」で「ノリのいい」キャラクターを演出することで、クラスの人気者の座を勝ち得ている。そんな修二はひょんなことからいじめられっ子の転校生、信太(野ブタ)に慕われるようになり、興味本位で彼を「人気者のギャグキャラ」に「プロデュース」することになる……。


●「メタ視」の笑い

 この小説の魅力は、やもすれば暗く、陰惨な内容になりかねない狭い人間関係のメタ視を、軽快な文章とユーモアのセンスである程度ポップにもっていった所にある。もちろん、この程度の「メタ視」なんて生ぬるいと感じる人もいるだろうが、結末で修二がたどる運命などを考慮すれば、こういったヌルさも作者の計算のうちだと納得できる。
 これは確かに「みみっちい見栄の張り合い」に違いない。しかし、そうしなければとても住み辛い世の中に、僕等は生きている。そんな悲哀をさらりと笑えるブラック・ユーモアに仕立てたこの作品は、現代における青春小説の佳作と位置づけていいと思う。

 僕は、この作品をぜひ、主人公の修二と同じ中校生のみんなに読んで欲しいと思う。リアルタイムで学園生活を送っている君たちには、この小説を笑い飛ばすことはできないかもしれない。もしかしたら、この主人公の修二に自分を重ね合わせたり、逆に反発を覚えることも多いだろう。
 けれど、ここで忘れちゃいけないのは、この小説があくまで「コメディ」として書かれているということだ。だから、作者も最後の最後までは踏み込んでいない。この作者が敢えて踏み込まなかったものが何なのか、わかれば大したものだと思う。そして、こういったものにきちんと距離を取って楽しむことができるようになれば、君たちの生活は文化的にも、そして人間関係的にもぐっと豊かになると思う。

(善良な市民)

by nobuta2nd | 2005-10-22 20:46 | 原作小説


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