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週刊 野ブタ。

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2005年 11月 08日

第4話

【今週のあらすじ】

 年に1度行われる隅田川高校の恒例行事!
 公衆の前で『愛の告白』を行うという『1・1・4 (イイヨ)』の日、11月4日がやってきた。
 信子は、バンドーの嫌がらせから、修二に愛の告白をすることになってしまう。
 一方、修二は信子をプロデュースする立場からか、 第4話_a0048991_215154100.jpg
 信子の告白への応えに当惑するのだった――!
 はたして、信子は修二に愛の告白をすることが出来るのか――!?
 そして、修二はどう決断をくだすのか――!?
公式サイト
  

【今週のストーリー解説】

■善良な市民

 それにしても学校というのは不思議な空間だ。「クラス」というせいせい何十人かの共同体の中での、相対的な力関係で「すべて」が決まってしまう。まるで物語の「登場人物紹介」に記されたキャラ設定のように、それは実際の人間関係を強力に規定してしまう。無論、これは学校に限らず、会社だろうが村の寄り合いだろうが、個人的なサークルだろうが、どんな人間関係にも当てはまることだ。しかし、学校という舞台装置が特殊なのは、この「キャラ設定」を通用させるための儀式が、きっちり制度化されていることだ。定期試験、体育祭、文化祭、生徒会役員の選挙……学校におけるすべての行事は無論「ごっこ遊び」だが、その本質はむしろ「キャラ設定」を根拠付けるための儀式として作用するところにある。
第4話_a0048991_21522160.jpg その典型例がこの第4話の「114(いいよ)の日」のイベントだろう。
 彼らも高校生だ、おそらく誰一人としてこの「114(いいよ)の日」の効果を本気で信じていない。けれど、彼等はこの儀式の存在を受け入れ、楽しみにしている。それは学校にいるという行為自体が、この「儀式によって根拠づけられるキャラ」を受け入れること=「キャラ売りゲーム」のプレイヤーであることを受け入れてしまうことに他ならないからだ。
 修二たちはこの強力なルールを逆手にとって信子を人気者にしようとし、バンドーはこの強力なルールを使って、周囲の自分に対する視線を裏切ってみたくなる。……これも小さな変化には違いない。

 この第4話は言ってみれば「展開編」だ。これまでの修二→信子の指導する→されるという関係、バンドー→信子のいじめる→いじめられるという(力)関係にほんの少しほころびが生まれ、次の展開を予感させる。
 更に言えば彰は信子への恋心に気付き、信子はバンドーに対する敵意を昇華させる。そして、修二ははじめて「仲間」を思いやる気持ちに目覚める。
 そして注目すべきは、この変化のどれもが、「学校」という小さな世界を支配する「キャラ売りゲーム」のルールから逃れる方向へと作用していることだ。信子を庇った修二とバンドー、敵対者に理解の目を向け始めた信子……そのどれもが、修二の会得していた「平坦な戦場を生き抜く知恵」の外側にあるものだ。 第4話にして予想外の射程の広がりを見せる「野ブタ。」。これはますます見逃せない。


■成馬01

 前3話に較べると話が弱いが登場人物たちの細かい描写や設定が多く(特に彰が空手が得意だというのには何故か笑った)今後の人間関係の伏線がバラかまれた回になったと思う。
 その意味で「野ブタパワー注入」のような単純に好きなシーンが多い。

 話自体は無理やり野ブタが修二に告白せねばならなくなり、全校生徒の目前で大恥をかかされてしまうのを、どう防ぐのか?というのがメインの筋なのだが。今までと大きく違う点がある、それは悩むのが野ブタでなく修二で、つまりクラスの人気モノの地位を守るか野ブタと彰の関係を選ぶか?という葛藤こそが問題だという点だ。 第4話_a0048991_21524942.jpg
 実は野ブタの物語は2話で終わっている。状況はあまり改善されていないし小説のように外見が綺麗になったわけではないが「自分は変わる」という硬い決意を野ブタは2話で獲得していて、以降は不器用ながら一歩づつ歩んでいる過程を見せているにすぎない、今回の野ブタパワー注入のシーンはその極めつけだ。逆に「野ブタと彰」or「クラスの人気モノ」という板ばさみで悩む修二に少しづつ視点が移っていて物語の作りは野ブタがどう切り抜けたか?ではなく修二が何を選ぼうとしたか?という手帳に書かれたあみだクジの結末と3人の写真こそが真のクライマックスとなっている。
 また前回見ていて印象的だった修二の底の浅さが更に強調され逆に彰と野ブタは殴られているバンドーをかばったりと外れもの故の強固さを見せている。
 多分今後は修二と野ブタの二人の比較で物語は進んでくと思うがどうなることやら。
それにしてもあんな誕生日祝いしてほしかったなぁ。


■中川大地

 もうダメッ。野ブタかわいいよ野ブタ!
 ……と、ちょうどこの回の放映日11/5が映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の公開日で、堀北真希が集団就職で上京した田舎娘を好演していたのを観たばかりだったから、地味だけど芯の強い、イマドキから距離のある子の役のうまさを実感したばかりだっただけに、「野ブタパワー、注入」には完璧やられました。。。
第4話_a0048991_21531155.jpg
 成馬さんご指摘のように、確かにもう信子のイジメ克服話自体は、すでにほぼアガリになってしまってるんですよね。いまや修二やバンドーを逆に変えてしまう、主体的で魅力あるヒロインにすっかりなってて。あと、彼女を見る周囲の目もだいぶ違っていて、「1・1・4の日」の告白者に挙がっても誰一人「野ブタのくせに」的な嫌悪をみせることなく、隠れ美人で服のセンスもいい学園のアイドルまり子への対抗馬として、純粋に野次馬根性や好奇心を寄せている。
 で、挙げ句の果てに信子自身がバンドーに対して、「私もクラスで浮いてるけど、あなたはもっと浮いてる」という状況を諭すという始末……。たしかに高校生にもなって同級生の誰かを殴る蹴るでイジめるような、しかも女の子なんて、まわりから相当距離を置かれるだろうし(というか第2話の時点であからさまなイジメには普通のクラスメイトは眉ひそめてましたね)、別に野ブタ自体が最初から嫌われていたわけではなく、バンドーみたいな粗暴なやつと関わり合いになりたくないから放っておかれてただけなんだろう、という図式が見えますね。そのへん、物語のメインプロットとは別に、さりげなくも入念に演出されていると思いました。
 また、メインプロット上も、2話では修二の会心のアイディア(ペンキ文字流行)主導で、3話では修二の苦し紛れの功労(バイト依頼)と偶然(生霊)と信子のアイディア(鏡のメッセージ)が等分にはたらいて転換と解決に繋がっていたのが、今回は完全に信子主導での問題解決だったし。

 反面、ヒーロー化しつつある彰の描写はいまいち乗り切れなかったところ。当初からウザイはずれ者的に説明されていながら、実際の描写としては周囲に流されない、かといって大した抑圧もないオイシイ立ち位置の不思議ちゃんでしかなく、そのうえ財力もあって腕っぷしも強いというのは、なーんか許せんなあ(笑)。もう野ブタへの恋でいっぱい悩め、苦しめ。
 一方では、どんどん追いつめられてゆく修二に感情移入。がんばれ、彰の「天然だけど人の気持ちがわかる」キャラに喰われるのはまだ早い! もっとノリつつシラけ、シラけつつノりながら、ひねた自意識とスキルにだってここまでならできる、という限界線をきっちり見せてくれるよう、期待。



【今週のチェックポイント】


■「1・1・4の日」イベントと恋愛の相対化

 これまでも「アフリカの子供」や「生霊」といった外的要素を契機に学校内のローカルなルールや価値観を根底から見直して土俵をずらしていく、というのが本作の事件進行のカタルシスだったわけだが、今回は「告白」と「交際」の儀式に縛られた恋愛ボケの制度を、野ブタの勇気がバンドーとの関係転換の場に転じる展開。結果、恋愛という物語を信じられない修二のキャラと、なまじ人並みに恋愛関係の体裁に縛れられるあまり彼氏から暴力をふるわれるバンドーと、まだ恋愛を介在させる準備のできていないプロデュース組3人のモラトリアム関係を救ってみせる。 第4話_a0048991_21534270.jpg
 あくまで周囲の押しつけるルールに乗って花を降らそうとした修二の内心の選択も、確かに「本当に大切なものに気づいた」彼の成長の証としてはアリだったけれど、恋愛という関係性への準備ができていない修二・信子の間で実行することはやはり不幸な結果にしかならなかったはず。だから修二の側も、このイベントの選択をいかに異化してズラして転ずるかを考えるべきではあっただろう。  (中川)


■セバスチャンの失恋 (1)

 序盤の方で、木村祐一のセバスチャン先生の見合い相手が学校にやってきて、何やら言い合いの末ふられてしまう顛末が描かれる。当然セバスチャンの方がしつこく言い寄って一方的にふられたのかと思いきや、母か彼女かの二者択一を迫られ、ハグレ者だった自分を唯一認めてくれていた母の方が大事だと愚直にも答えてしまったゆえのことだったと修二に語る。
 周りの生徒はそんなセバスチャン先生の選択を、女の前ではウソでも彼女の方を選んでおくものだと馬鹿にするが、理不尽な選択の強制を、自分の心を偽らずにする、という伏線が張られると同時に、必ずしも恋愛ばかりが優先すべき事項ではない、というモデルの呈示にもなっているあたりも、ありきたりを超えた注目点のひとつ。  (中川)


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■セバスチャンの失恋 (2)
 お見合い相手にマザコンを責められ、振られてしまったセバスチャン。「自分の親が好きで何が悪いんだ」と漏らすセバスチャンを、修二はじっと見つめる。これは無論、最終的に信子のために自分を犠牲にすることを選ぶ修二の決断への伏線である。修二は学校を支配する「キャラ売りゲーム」の価値観の外側に、大切なものがあるのではないかと感じ始めているのだ。(市民)


■彰の恋

 今までは野ブタや修二に較べて飄々として掴みづらかった彰の見せ場が今回は多かった
 バンドーを殴る彼氏を殴り、修二に水をかけるなと瓦割りセットを一式もって修二の家に行き瓦割りをして脅す。そしてホントおじさんにつめよられて、はじめて自分の気持ちを発見する彰。自分の気持ちに気付かず行動していたのがが男の子っぽくはじめて俺は彰を身近に感じた。特に恋愛に関してこのように鈍感な男の子は多いのではないだろうか?
 彰は恵まれた境遇ゆえに修二や野ブタのようなある意味で過剰な内面は持ち合わせておらず人間関係に無頓着でその悩みの欠落からそこにこだわり悩む二人に自分にないものを感じ近づいたような気すらする。
今回、彼は自分の欲しいもの大切なもに気付いてしまった。
 それは楽しいことだけでなく辛いことの始まりでもあるわけだけど彼はどう変わるのか? (成馬)


■「気付き」の物語

 俺が思うに「野ブタ。」は「いかに気付くか?」の物語なのではないか?と思う。
 それはゲーム的な桐谷修二の切り抜け方(今回はまったく出番なしだけど) の部分だけではなく、2話の感想で中川大地さんが指摘した外部の問題もそうだ。自分を取り巻いている世界が全てでないこと、自分の中にある気持ちに気づくこと、自分にとって大事なものに気づくこと 野ブタは自分の中の野ブタパワーに気づき彰は野ブタへの恋心に気づき、修二は大事にしたい仲間の存在に気づいた。 第4話_a0048991_21543993.jpg
 物語にはつねに小さな発見があり、その発見の数だけこの世界は豊かになっていく。 だが気付くという面には良いことだけではなく辛いこと悲しいこともあるのではないか?
 例えば彰は野ブタへの自分の気持ちに気付いたけど他の二人はどうなのだろうか?
 ラストの彰の気持ちの気付きが幸福なトライアングルの破綻を予感させ不安にさせる。でもその不安も含めて世界を肯定したいと思うような終わり方をしてくれるだろうと俺は期待している。 (成馬)


■彰のホワイトバンド

 第4話にはホワイトバンドを装着し「愛と、勇気だけが友達さ」とアニメ「アンパンマン」のテーマを熱唱する彰が登場する。「ホワイトバンド」と「アンパンマン」。無論この二つは「偽善」または「しらじらしい善意」の記号だ。しかし第1話から明らかなように、「野ブタ。」の世界観はベタにこのような「偽善」的パフォーマンスを肯定するわけでもなければ、冷笑的に糾弾するわけでもない。第4話_a0048991_21573485.jpg
 むしろ金持ちの息子として生まれ、「何をやっても楽しいと思ったことがない」と語る彰にこれらのアイテム(「愛」「勇気」「世界平和」)を装着させることにより、この種のアイテムを(肯定するにせよ否定するにせよ)パフォーマティブに消費するしかない僕等消費者の現実を確認しているのだろう。勿論、そんな彰がただひとつ得ている(偽善ならぬ)確かなものが何か、ということはこのドラマのテーマに直結していく。 (市民)


■本当のことを教えてくれ!

 第4話で登場する「本当おじさん」。突然現れて「本当のことを教えてくれ」といいながら人を追い回す怪人だが、この怪人の出現により第4話のオチが綺麗に決まることになる。
第4話_a0048991_2155976.jpg「本当のことを教えてくれ」と連呼しながら校長を追い回していた怪人は修二たちに激突。結果、3人のお揃いの「野ブタ手帳」が入れ替わってしまう。その結果、信子は修二の本心を知り、修二は自分が信子と彰を大切に思い始めたことを再確認する。まさに「本当のことを教えに」怪人はやって来たのだ。 (市民)


■修二の変化 第4話_a0048991_215742.jpg

 第4話ではイマイチ影の薄かった修二だが、ラストでなんと自分の「クラスでの美味しい位置」を投げ捨ててでも信子をかばうつもりだったことが判明する。つまり、この「キャラ売りゲーム」を最も熟知し、その恩恵を受けてきた(がために視野狭窄になりかけていた)修二が、「キャラ売りゲーム」の外側にも価値があること、教室の外側にも世界があることに気付き始めたのだ。もっともゲームに耽溺していた修二が、今、ゲームのルールに拠らない場所で、変わろうとしている。 (市民)


■戦メリ戦法
  
「戦メリ戦法」とは敵対する相手にいきなりキスして戦意を喪失させるテクニックのことで、漫画家・吉田秋生の『河よりも長くゆるやかに』に登場する。第4話_a0048991_2156992.jpgなんで「戦メリ」なのかというと、大島渚監督の映画「戦場のメリー・クリスマス」で主人公の米兵捕虜・ロレンスが、彼を虐待しようとする敵の日本軍士官・ヨノイに突然キスして周囲を驚かせるシーンに拠っているからである。ここでロレンスは、自分に敵意をもつヨノイに、無防備に自分をさらし、自分には敵意がないことを示すことで、ヨノイの敵意を解除することを試みたわけだ。 第4話_a0048991_21562595.jpg
 この第4話で信子がバンドーに対して取った戦術は、まさしくこの「戦メリ戦法」と言える。
 「信子以上にクラスから浮いている」バンドーにとって、戦メリ戦法を取りいきなり「自分に敵意を向けない無防備な存在」として出現した信子は、その生き方を揺らがせるに充分すぎるほど衝撃的な存在に思えたに違いないのだ。 (市民)

■変わるの意味

 野ブタは「人って変われますよね」と言うが、この変わるの意味は小説版とドラマ版ではかなり違う。
 小説版の変わるは言うなれば本当の自分なんて入れ替え可能だよっていう意味で服装を変え清潔にすれば気分も周りの見る眼も変わるっていう表層的なものが全てを決定するって価値観で、それは人間関係も含めて全てが可視化されていく現実をうまく捉えているという評価はできないことはないが、対してドラマ版はそれでも見えないもの気付いてないものがあるんだよと追求する。
 だからこのドラマにおいて「変わる」というのは自分の中にある強さを発見する、見つけるという意味合いが強い。   (成馬)

by nobuta2nd | 2005-11-08 21:59 | 第4話


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